「InsightXはCX最適化のパートナー」──オンワードデジタルラボが語るInsightXとの3年間

「InsightXはCX最適化のパートナー」──オンワードデジタルラボが語るInsightXとの3年間

約200ブランド・17万点以上の商品を扱う「オンワード・クローゼット」は、数百万人のユーザーが訪れるファッションECサイトです。同サイトのマーケティングには、シーズン、トレンド、サイズ、価格、好みなど、膨大な変数が存在します。商品群とこれらの変数を組み合わせて一人ひとりのお客様に最適な体験を届けることは、そう容易ではありません。 

オンワードデジタルラボでマーケティングを担う小泉氏は、InsightXとの3年間の協業を通じ、この難題に向き合ってきました。個々のユーザーインサイトに沿ったグルーピングで商品群を提示する「こだわりニーズシェルフ」の導入に始まり、コーディネートのレコメンド、ダッシュボードを活用したCX全体の改善へなど、両社は課題解決のための道のりを一歩ずつ歩んでいます。その軌跡を主担当の角との対談形式で振り返ります。

プロフィール  

小泉雄也氏│株式会社オンワードデジタルラボ デジタルマーケティングDiv マネージャー

オンワードグループの自社ECサイト「オンワード・クローゼット」のマーケティング全般を担当。 戦略策定やKPI設計などのプランニングから、新規獲得や既存リテンションなどの施策実行まで、 顧客数拡大とLTV向上をミッションに、未認知からファン化までのあらゆる活動に従事。 また、データ分析や顧客戦略の推進など、ブランド事業部門のマーケティング活動のサポートも行う。

角 隆一│株式会社InsightX CBDO 

英キングス・カレッジ・ロンドンの学部、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの大学院で生命科学系を専攻。2019年、Strategy&へ入社。幅広い業界で新規事業開発・中期経営計画策定などを経験。2022年、InsightXへ参画。オンワードとの取り組みでは、PoCのプロジェクトリードから、正式ローンチ後のデータ分析・シェルフの追加実装・更なる改善施策の実現など、クライアントへの価値最大化をあらゆる側面からリードしている。

漠然とした「あなたにおすすめ」の限界を感じていた

角:InsightXを導入する以前、どのような課題がありましたか?

小泉氏: アパレル商品は購入を検討する際に評価する”変数”がとても多いんです。シーズンやトレンド、素材や機能性といったスペックのほか、サイズや価格といった制約条件があります。さらにブランドの世界観、個人の好みという抽象的な要素も入ってきます。

 お客様はそれらを掛け合わせて商品を評価するわけですが、インサイトを言語化できなかったり、そもそも気づいていなかったりすることも珍しくありません。だからこそ、お客様一人ひとりの深いインサイトをきちんと理解した上で、17万点以上の商品群からインサイトに沿った商品を選び出し、最も効果の高そうなものから優先順位をつけてお届けする——それが理想の姿です。ECサイトには実店舗のような売り場がなく、限られた画面の中でいかに早く”顧客の求めている商品”を届けられるかが勝負ですから、商品の選び方と見せ方が本当に重要になります。

ただ、InsightX導入以前は、そこに疑問を持たないまま協調フィルタリング型のレコメンドを運用していたというのが正直なところです。いわゆる「あなたにおすすめ」というタイプのものですね。

角:そこから意識が変わったきっかけは何でしたか?

小泉氏: NetflixやSpotifyのようなサービスが普及する中で、おすすめされた理由がわかるレコメンドが浸透しました。こうした時代の流れを受けて、レコメンドの在り方そのものを見直したいと考えたのがきっかけのひとつです。 

両サービスのレコメンドに共通しているのは、その商品をなぜおすすめするのか、つまりおすすめした文脈まで伝えていることです。こうしたレコメンドは、お客様の潜在的なインサイトを言語化する役割も果たします。

 加えて、アイテム単体ではなく、ECサイト内に点在する記事コンテンツやスタッフコーディネートなどのアセットを横断して、レコメンドを構築したいという思いもありました。 こうした課題を解決できるパートナーを探していて出会ったのが、InsightXです。

角:私たちがお声がけさせていただいたのは、2022年末のことでした。オンワードさんはInsightXにとって2社目のクライアントで、まさに一緒にプロダクトを作っていただいたパートナーだと感じています。

小泉氏:そうでしたね。一緒にやりたいことを言語化していくうちに、少しずつ「今までやりたかったことを実現できそうだ」という手応えが芽生えていきました。

「ある世界」と「ない世界」──本質的なKPI評価へのこだわり

角:お声がけさせていただいた2022年末から、PoCに約1年かけて、こだわりニーズシェルフの正式リリースに至りました。私たちも手探りではありましたが、一緒にやりたいことを言語化しながら、検証の設計を一つずつ詰めていった期間でしたね。こだわりニーズシェルフは、一人ひとりのインサイトに合わせて、最適な商品群を特定し、おすすめの理由を明示して商品を表示する仕組みですが、導入してみていかがでしたか?

小泉氏:従来の「あなたにおすすめ」型レコメンドでは、お客様は「その商品がなぜおすすめされたのか」がわかりませんでした。一方こだわりニーズシェルフはおすすめする理由が明示されるので、「そうそう、こういうくくりで探していたんだよね」と、お客様自身が気づけます。 この購入体験は効果的だろうと見越していましたし、レコメンドの”筋”が良ければ、お客様が自発的におすすめエリアを見る好循環が回ると期待していました。実際、その期待どおりの成果を得られたと感じています。

角:定量的な成果も得られましたか?

小泉氏: InsightXが「ある世界」と「ない世界」を大規模なA/Bテストで比較してくれたおかげで、商品詳細ページへの遷移や、ページ経由の売上に明確なリフトが確認できました。 最も大事なのは、この評価の仕方です。一般的なSaaSベンダーは、いわゆる経由売上のような一面的な指標を出す傾向がありますが、それだけでは「導入したから売れたのか、それとも元々買うつもりだったのか」が判断できません。施策の本当の効果は、「ある世界」と「ない世界」の差分で見て初めてわかるものだと思っています。

角:その点は、私たちも強くこだわっている部分です。

小泉氏: たとえばクーポン施策を実施した際、クーポン利用者の購入額では効果を正しく見ることはできません。ユーザ全体を可能な限り同質化された2グループに分類し、一方に配布、他方は未配布として、結果を比較することで施策による影響を評価できます。 言ってしまえば当たり前のことなのですが、この”差分”の考え方を組織的に実践できている事業者さんは、意外と多くありません。

私たちのチームでは、この”差分”の検証をさまざまな施策で徹底しています。 InsightXは、同じ土俵でこの”差分”の検証をしてくれました。場合によってはマイナスの結果が出る可能性があるにも関わらず、包み隠さずデータを見せてくれるんです。その真摯な姿勢は、他とは明確に違うところだと感じています。だからこそ、納得感を持って「続けよう」と判断してこれました。

角:ありがとうございます。実は当初、すべての施策でA/Bテストを徹底すべきだと考えていました。しかし取り組みを重ねる中で、厳密さとスピードの天秤が常にあることを実感するようになりました。A/Bテストが設計できないケースでは、経由売上だけで判断するのではなく、ユーザーの定性的な行動指標も含めて総合的に評価する——数値の上下だけでなく、施策が本当にポジティブな変化をもたらしているかを問い続けることが、私たちのスタンスです。その点、小泉さんはどうお考えですか。

小泉氏:おっしゃる通りで、すべてに対して必要だとは思っていません。オンワードの場合は今回のサービス導入検討のなかで、PoCのための時間を十分確保できていたという背景があります。InsightXの本質的な効果を示したいというスタンスも、私たちのカルチャーや状況とフィットしていたのだと思います。

もしも他社がInsightXを検討しているならば、オンワードのテスト結果を通じて効果を判断していただくのもひとつの手段だと思います。逆に、もしも引っかかる点があれば、時間とコストをかけてとことんテストしたほうがいいです。そこはケースバイケースですね。

角:定性的な反応についても聞かせてください。こだわりニーズシェルフ導入後、ユーザーさんからの声に変化はありましたか。

小泉氏:定性的なフィードバックを体系的に調査できているかというと、まだそこまでは至っていません。 ただ、「オンワード・クローゼット」は200近いブランドが横断するサイトなので、もしもレコメンドの文脈と商品がちぐはぐになれば、当然お客さまやブランド担当者から指摘が入ります。しかし、そういったネガティブなフィードバックがない中で、定量的なパフォーマンスが向上していることが、レコメンド精度の高さの表れだと感じました。

角:そのほか、導入後に得られた気づきや変化はありますか?

小泉氏:水着などの閲覧頻度が低いカテゴリーの商品が、シェルフにピックアップされることでインプレッションの機会を得て、そこから購入につながるケースも増えてきました。お客様が出会いたいのに出会えていなかった商品に、光が当たるようになったと思います。お客様にとってはもちろんプラスになるところですし、こうしたサイトの品揃えとしてニッチなカテゴリーの商品を主力にしているブランドにとっても、非常に嬉しいポイントだと思います。

ダッシュボードのインサイトが、CX最適化の基盤に

角:ダッシュボードについてもお聞きしたいです。

小泉氏:非常に助かっています。私たちはGoogle Analytics(以下、GA)を中心に運用しているのですが、サイトUIの分析となると、実はかなり手薄だったんです。

角:手薄になってしまっていた原因はありますか?

小泉氏:たとえばトップページにバナーが並んでいるとして、そのクリック率を出すには、クリック数だけでなく、バナーが何回表示されたか……つまりインプレッション数も必要です。ところがGAでインプレッションを計測しようとすると、バナーが表示されるたびに計測用のイベントを発動する設計が必要です。

サイト内のあらゆるエリアでこれをやると、膨大なイベント数になります。そしてGAは従量課金なので、コストが一気に跳ね上がるんです。 結果として、多くのコンポーネントでインプレッションを取れておらず、クリック率が計算できない状態でした。

ヒートマップのような専門ツールの導入も検討しましたが、そうすると学習コストが高い上に、私たちが見たい粒度とは少しずれてしまいます。私たちはあくまでコンポーネント単位でのパフォーマンス比較がしたいからです。 InsightXのダッシュボードは、そんな私たちにとって、まさにちょうどいい塩梅の機能を備えていました。

角:具体的にはどんな使い方をされていますか?

小泉氏:InsightXのダッシュボードは、ページ単位・コンポーネント単位で、インプレッション、クリック、コンバージョンレートなどが整理されており、サイト全体でお客様にどのような顧客体験を届けられているかがすぐに見られます。 

以前は社内で「今のサイトの見え方って適切なんだっけ?」と議論するとき、そのたたき台になるデータがなかなかそろえられなかったのですが、ダッシュボードのおかげでその課題が解消されつつあります。

 今は私たちのチーム内での活用が中心ですが、データの見せ方がさらに整っていけば、サイト内コンテンツ企画の編集チームや、ブランドの商品担当者にも広がるポテンシャルがあると感じています。 「こういうニーズに、これだけのお客様が興味を示しています」といったデータが、商品企画やコンテンツ制作の現場に届くようになれば、CX最適化の文化がチームの外にも根づいていくのではないか、と期待しています。

次はさらなる顧客体験価値向上を目指して

角:こだわりニーズシェルフで一定の成果が見えたことで、次のステップの議論がしやすくなりました。現在はコーディネートのレコメンドにも取り組んでいますが、これもその流れですよね。

小泉氏:まさにそうです。シェルフの定量成果があったからこそ、社内で「次はコーデでも同じアプローチを試そう」という合意が取りやすかったです。コーディネートは、購買影響の大きい要素であることが貢献度分析によってもともとわかっていて、ユーザの趣向や体型に応じたコーデやスタッフのレコメンドをやりたいと考えていました。すでにレコメンドの実績があるInsightXとそこに挑戦するのは、自然な流れでしたね。コーディネートページの分析などでも、角さんにはお世話になっています。

角:ありがとうございます。コーディネートの一覧ページで、1ページ目での離脱率が2ページ目以降と比べると高いことがデータからわかったのは大きな気付きでしたね。最初に目に入るページのテコ入れが、大きなインパクトを出すということを、マーケティングチームの皆さまに共有できました。こういった形で現在も改善サイクルを回していますが、InsightXとの今後の取り組みで期待されていることを教えてください。

小泉氏:InsightXは「CX最適化のパートナー」だと思っています。これからも、単なるレコメンドの最適化やエリア拡充にとどまらず、CX全体の戦略を共に考えていけたら嬉しいです。

あるお客様には商品を、そして別のお客様には記事を優先的に見せるというように、コンポーネントの選定や、表示順そのものをパーソナライズしていけるのが、最終的な理想形だと考えています。もしもそれが実現できたら、InsightXの唯一無二の価値になるはずです。 

PoCからリリース、そして改善プロセスと、約3年間の月日を重ねてきました。InsightXはレコメンド機能をパーツとして実装して終わるのではなく、改善サイクルを一緒に回し続けてくれるパートナーになってくれました。これからも一人ひとりのお客様に届ける体験価値を、InsightXと共に向上していきたいです。

■事例サイト

オンワード・クローゼット

https://crosset.onward.co.jp/

オンワードグループが運営するECサイト。約200ブランド・17万点以上の商品を取り扱い、数百万人のユーザーが訪れる。ファッションECとして、シーズンやトレンド、素材・機能性、サイズ・価格といった多様な変数を持つアパレル商品を販売する。商品だけでなく、スタッフコーディネートや特集記事など多彩なコンテンツを横断的に展開しているのも特徴。

文 |宿木屋

撮影|藤田亜弓

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