500を超えるブランドを、一人ひとりに ── モール型ECでルミネが実現した“膨大な品揃えに埋もれさせない”パーソナライズ

500を超えるブランドを、一人ひとりに ── モール型ECでルミネが実現した“膨大な品揃えに埋もれさせない”パーソナライズ

500を超えるブランドと15万点を超える商品を扱う「i LUMINE(アイルミネ)」は、数百万人のユーザーが訪れるファッション通販サイトです。運営しているのは、首都圏を中心とした国内16店舗に加え、海外にも2店舗を展開する株式会社ルミネです。

同サイトのマーケティングには、モール型×多商材ECならではの難しさがあり、一人ひとりのお客様に最適な買い物体験を届けることは、容易ではありません。

株式会社ルミネのEコマース部でマーケティングを担う早川氏は、InsightXとの2年間の協業を通じ、課題解決のための道のりを歩んできました。その軌跡を主担当の和田との対談形式で振り返ります。

プロフィール

早川 倫夫氏|株式会社ルミネ Eコマース部 

2011年にルミネに入社。ルミネ荻窪店営業部に配属後、北千住店営業部を経て、2019年より本社Eコマース部に配属。現在はi LUMINEにおける販売促進やデジタルマーケティング領域を担当している。

和田 哲也|株式会社InsightX Forward Deployed Engineer

大阪大学情報系修士卒。学生時代からインターンとしてInsightXに参加し、初期メンバーの一人としてプロダクトの立ち上げに携わる。2024年にInsightXに新卒入社。ルミネとの取り組みでは、i LUMINEにおけるパーソナライズ体験の開発を技術面からリードするとともに、PoCの社内調整から本導入後の改善提案まで、お客様との対話を主担当として牽引している。

手動運用の限界を感じていたときに出会ったInsightX

和田:本日は、これまでの取り組みを振り返る機会をいただき、ありがとうございます。早川様とは最初の接点から2年以上ご一緒させていただいていますので、こうしてあらためてお話できることを大変嬉しく思っています。今日はよろしくお願いします。 

早川氏:こちらこそ、よろしくお願いいたします。

和田:ではさっそくお伺いしていきます。InsightXを導入する以前、i LUMINEにはどのような課題があったのでしょうか?

早川氏: トップページの商品訴求が弱すぎることが最大の課題でした。商品レコメンドがほとんどなく、人気ランキングしか表示されていなかったので、せっかくサイトを訪問してくださったお客様に、いろいろな商品を見る機会を提供できていませんでした。

多くのお客様が最初に訪れるページなのだから、気になる情報をもう少し出したいと考え、2週間毎に4〜5つのテーマを考え、そのテーマにあう商品を20商品程度ずつピックアップし、トップページに固定で表示されるようにしたのです。とはいえレコメンドロジックを組むのは難しいため、メンバーに協力してもらい、テーマ設定から商品選定、プラットフォームの設定まで、すべて手動で行いました。

和田:2週間に1回のサイクルでそれをするのは、かなり大変だったのではありませんか?

早川氏: そうですね。設定をしながら次のテーマや商品を募集しなくてはならないので、常に追われていました。設計上の問題もあったのですが、成果が見えづらく、手間がかかる割には報われていない気がしていました。タイトルや見出しも考える必要があり、作業工数としては毎回1〜2時間、企画や精査を含めると、もっとかかっていたかもしれません。

そんなことを1年近く続けて手動運用の限界を感じていたのですが、自分で言い出したことでもあり、なくすとトップページがあまりにも寂しくなってしまうので困っていました。

和田:私たちが声をかけさせていただいた2023年末は、そんな大変な状況でいらっしゃったのですね。

早川氏: はい。当時の事業部長が社内からの紹介でInsightXさんと打ち合わせをすることになり、私も同席しました。最初は、「お客様一人ひとりのインサイトに合った最適な切り口と商品を組み合わせ、完全自動で提案できます」と言われても半信半疑でした。しかし、説明を聞いて課題解決に直結するアプローチだと直感し、導入したいと思いました。

和田:半信半疑の状態から踏み込んでくださったことに、あらためて御礼を申し上げたい気持ちです。それからPoCに向けて、社内でどのような準備をされたのでしょうか?

早川氏:初取引に加えてスタートアップとの契約可否が一つ目のハードルでした。当時、InsightXさんは設立から日が浅かったですし、そういった企業との契約はほぼ前例がなかったものですから。また、弊社の商品情報やタグを埋め込むにあたり、システム連携やセキュリティ対応が可能かという懸念もありました。そこで、法務部門やシステム部門の担当者に相談し、PoCを実施したいと協力を仰ぎました。

和田:御社の皆様の反応はいかがでしたか?

早川氏:会社としても新しい取り組みが必要だという認識はあったので、ノーとは言われなかったですね。JR東日本グループは「安全」を経営のトッププライオリティに位置づけていますが、そのなかでルミネという会社は、生活サービス事業のトップランナーとして常に新しいことへのチャレンジが求められる社風です。だからこそ、全自動でお客様一人ひとりに刺さる切り口を出せる可能性があるなら、やってみる価値は大いにあると捉えられたのだと思います。

和田:当時の私たちは大企業とのやりとりの経験が浅く、早川さんにお手数をおかけしてしまった気がします。前例のない取り組みに向けた社内調整は簡単ではなかったと思いますが、それでもハードルを飛び越えてPoCを実現させようとした理由はなんだったのでしょうか?

早川氏:一番は、我々がまさに求めていた、先進的なパーソナライズをやっている会社がほかに見当たらなかったことですね。他社がやっていない先進的な取り組みには、大きな価値があります。また、InsightXの皆さんの真摯に打ち合わせに向き合う姿勢や、シャープな切り口の提案を目の当たりにし、企業の実績はまだ少ないけれど、言行一致を貫いていて信頼できると感じたので、なんとか実現したいと思いました。

和田:ありがとうございます。そう言っていただけて本当に嬉しいです。

モール型×多商材ECならではの、見せ方の難しさ 

和田:トップページの改修に取り組まれていた背景には、モール型ならではの難しさもあったのでしょうか?

早川氏:はい。i LUMINEはショップの数も商品点数も多いのですが、当社が商品を開発しているわけではなく、在庫をコントロールできる立場でもありません。MD(販売戦略)の面でも、どの商品をどう組み合わせて見せるか、そもそも今どこに在庫があるのか……そういった情報を網羅している訳ではないので、「いつ、どの商品をどのように見せていけばいいのだろうか」と、販売戦略を決めかねている状態でした。

和田:自社で商品や在庫を管理する自社ECとは、そもそもの前提が違うのですね。

早川氏:そうなんです。何とかテーマを設定して、各ショップの担当者に「このテーマに合う商品はありますか」と問い合わせることもありましたが、担当者同士のやり取りに時間も工数もかかり、とても非効率でした。きちんとした特集を1本作ろうとすると、企画から情報集約してページ公開するまで、トータルで1ヶ月近くかかることもあります。それだけ手をかけても、「今のお客様に合った打ち出し」が必ずできるわけではない、というのが大きな課題でした。

和田:1本に1ヶ月、というのはかなりの重さですね。

早川氏:ルミネのEコマース部にはルミネ各館の勤務経験者が多く、本当の意味でECに長けた人材が揃っていたわけではありませんでした。だからこそ良い意味で常識に囚われない自由な発想ができていましたが、ECならではの見せ方や導線のノウハウが足りていなかったことも、施策をうまく回せていなかった原因の一つだったと思います。

和田:導入にあたって既存のレコメンドの状況を分析させていただいた際、ごく一部の上位商品ばかりが繰り返し表示されたことに驚いたのを覚えています。最初は自分がクエリを間違えたのかと思ったほどです。「見せ方の難しさ」が、数字としてはっきり見えた瞬間でした。

早川氏:15万点を超える品揃えがあるのに、以前使っていたツールでは表示のほとんどが数十商品に持っていかれていて、本当に衝撃でした。売上だけ見れば一定の成果は出ていたのですが、多様な提案ができていないことを認識することができました。InsightXのデータを見せていただき、「そこまで分析してくれているのか」と感激しました。

和田:InsightXに価値を感じていただけたことを、本当に光栄に思います。

早川氏:品番数が多いモール型のサイトほど、単に売れているものを並べる仕組みだと一部に集中してしまいます。そこをまんべんなく、新しい商品まで含めて一人ひとりに当てられるというのは、私たちにとって本当に大きな価値でした。

PoCを経て本導入へ──「どうやって出してるの!?」と驚かれた変化

和田:2024年5月頃からPoCを始め、約半年かけてトップページの改修や商品シェルフの導入を進めました。導入の前後で、どのような変化を感じられましたか?

早川氏:以前に比べ、トップページ情報のバリエーションが豊富になったのが、一目でわかりました。トップページから商品ページへの遷移も大幅に増え、サイト滞在時間と回遊率が明確に改善しました。

※i LUMINEのトップ画面の一部。一人ひとりの嗜好に合わせて最適なコンテンツを提案することで、お買い物の起点となる新たな出会いを実現する。

和田:コスメのタブなど、アパレル以外の商材にも広げさせていただきましたが、商材ごとの相性のようなものは体感されていますか?

早川氏:閲覧数が多く、受注の構成比が高い商材ほど、より豊富なレコメンドができると感じています。 そういう意味で、相性が圧倒的に良いのはアパレル、特にトップスやアウターですね。一方で、コスメのように、アパレルとはお客様の購買行動や商品検索の仕方が異なる商材でも活用できています。「アパレル向けの仕組み」に留まらない、幅広い商材に応用できる可能性を感じています。

和田:こうした成果や変化について、社内の皆様からはどのような反応がありましたか?

早川氏: デモ画面を共有したときには、「どうやって表示させているの!?」という驚きの声が上がっていました。実際に見ているものに近いカテゴリーや切り口が出てくるのは、やはりすごいことですから。商品シェルフの見せ方のインパクトも大きく、「こんな見せ方もできるんだ!」と目を輝かせる社員が多かったです。

和田:それだけの手応えを感じていただけたことは、私たちとしても大きな励みになります。 

早川氏:PoCの段階から社長にも定期的に報告していて、「とても良いね」という反応をもらっていました。「店頭で一人ひとりのお客様のニーズを聞いて商品を提案するのと似たことが、ECサイトでも可能になる」とお伝えしたときには、「ネット上とはいえ、パーソナライズは重要なテーマだから、ぜひ推進して」と言われました。

和田:私自身は本導入もスムーズだったと感じているのですが、早川さんの実感としてはいかがでしたか?

早川氏: 数値もよかったですし、InsightXさんが途中経過の資料をわかりやすく作ってくれたので、最終の意思決定にも持っていきやすかったです。むしろ「コストの割にできることが多い」と社長は驚いていて、「早くやらないのか?」と、本導入を急かされたくらいでした。

和田:そうした成果に加えて、業務面での変化はいかがでしたか?

早川氏:個人的には、2週間に1回の手動設定作業から解放されたことでシンプルに余白が生まれて、ほかのことに注力できるようになりました。

信頼できるパートナーと手を取りあい、顧客体験の価値向上を

和田:PoCから本導入を経て、これまで2年間協業をさせていただいていますが、InsightXとの取り組みをどのようにご評価いただいていますか?

早川氏定量分析・定性分析のバランスが非常によいと感じています。高い分析力のみならず、能動的にインサイトの抽出と課題の設定を行い、ネクストアクションまで考えた状態でミーティングに来てくれる会社は貴重です。こちらとしても勉強になっています。

和田:InsightXという組織については、どんな印象をお持ちでしょうか?

早川氏新しい取り組みをする際、「こんなことできる?」という軽い話から、対応までのスピードが非常に速いという印象を持っています。他社では工数の見積もりから始まって、実現に至るまで時間がかかることが多いですが、InsightXさんはPDCAサイクルがクイックで、すぐにクオリティの高いデモを見せてくれます。ライトにハイレベルなことが実現できることに、いつも驚かされています。

それが信頼につながり、今では新しいことを考えると「できるかどうかわからないけれど、とりあえずInsightXさんに聞いてみよう」と思えるパートナーになっています。

和田:私たちも、「まずはInsightXに聞いてみよう」と思っていただける関係性を大切にしたいと考えています。アイデアの段階のお話から新しいプロダクトの種が生まれることも少なくないので、これからもぜひお気軽にご相談いただきたいです。 

早川氏:直近では、お気に入りページの表示改善を相談させてもらいましたよね。最初はお気に入りに基づくレコメンドを試してみたのですが、結果がうまく噛み合わなくて。それなら、マイページの中でお気に入り登録商品をシンプルに見せる形のほうがいいのでは、という相談です。一度試したものを「やっぱりこうしたい」と引き返すような話でも、遠慮なく投げられる関係になっているのは、ありがたいですね。

和田:では最後に、今後、どのような取り組みをしていきたいか、未来の展望があればお聞かせください。

早川氏:リアル店舗とデジタルをシームレスに融合させ、お客様に快適なショッピング体験やサービスを提供すること、いわゆるOMOが一番大きなテーマだと思っています。

具体的な話をすると、現在はお客様のオンライン(i LUMINE)の閲覧・購買データのみをを活用してレコメンドをしていますが、実際はリアル店舗でも買い物をされている方が大半なので、将来的には店頭での購買データも連携して新しい提案ができたらいいですね。

和田:オンラインとオフラインを掛け合わせることで、さらに新しい顧客体験が生まれそうですね。今後の展開がますます楽しみになりました。

本日は、PoCから本導入までの取り組みを振り返りながら、ポジティブな評価を伺うことができ、サービス事業者冥利に尽きる時間になりました。既存のやり方にとらわれず新しい挑戦をされるルミネ様に伴走させていただき、皆様の期待を超える成果を生み出していきたいと思っています。本日は、本当にありがとうございました。

■事例サイト

i LUMINE(アイルミネ)

https://i.lumine.jp

株式会社ルミネが運営する、数百万人のユーザーが訪れるファッション通販サイト。500を超えるブランドと15万点を超える商品を扱う。

文 |宿木屋 

撮影|藤田亜弓

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