“店舗の良さ”を、ECに実装する。── 元・販売員のEC責任者が、InsightXと描く顧客体験の未来

“店舗の良さ”を、ECに実装する。── 元・販売員のEC責任者が、InsightXと描く顧客体験の未来

セレクトショップ「SHIPS」を展開する株式会社シップス。メンズ・ウィメンズ・キッズのアパレルから雑貨まで幅広く取り扱い、店舗とECの両軸で顧客体験を提供しています。同社のデジタルマーケティング課で課長を務める茅野充宏氏は、新卒から5年間、店頭で接客に立った経歴を持つ「元・販売員のEC責任者」です。店舗ならではのきめ細やかな接客を間近で見てきたからこそ、ECサイトでは届けきれない顧客体験のギャップを長年問い続けてきました。

「店舗のような顧客体験を、ECでも実現できないか」── その問いに応える形で、InsightXとの取り組みは2022年末に始まり、2025年のレコメンド全面リプレース、商品シェルフ導入を経て、現在はコーディネート、メール、記事へと展開を広げています。3年半の歩みを、主担当の香取との対談形式で振り返ります。

プロフィール

茅野充宏氏|株式会社シップス DX部 デジタルマーケティング課 課長

大学在学中からアルバイトとしてシップスでのキャリアをスタート。5年間の店頭販売を経験し、ECへ異動。自社サイトやモールの運営や、2度の自社サイトのリニューアルを経験後に一度シップスを退社。5年間他社にてEC運営に加え広告やコンテンツマーケティングを経験。2022年にシップスに復帰。現在は自社サイト開発・施策運用、サイト分析、SEO、APP、広告、MA、WEBデザイン、SNSなどを束ねたデジタルマーケティング部門の責任者として従事。

香取宏和|株式会社InsightX DeploymentStrategist

英インペリアル・カレッジ・ロンドン理学系修士卒。2019年にデロイトトーマツコンサルティングに入社。大手アパレル企業のデジタルCX改革支援に約2年間携わったほか、保険、総合電機メーカーなどのプロジェクトを経験。2024年、InsightXへ参画。シップスとの取り組みでは、レコメンドのリプレースから商品シェルフ導入、各種コンテンツへの展開構想まで、顧客体験向上をリードしている。

「これぞお客様が求めている体験」──初回提案での直感

香取:本日は改めて、これまでの取り組みを振り返る機会をいただき、ありがとうございます。茅野さんは大学在学中から5年間、店頭での接客を経験されてからECの世界に入られたと伺いました。当時の経験は、現在のお仕事にどう影響していますか?

茅野氏:店頭にいた頃、お客様が手に取った商品を見て「こちらもどうですか」と一声かけることが、接客のきっかけになるんです。一見何気ない会話に見えますが、お客様の興味を広げて購入につなげていく、とても大切な瞬間です。

ところがECに移ってみると、その「一声」を再現する手段がない。当時はもちろん今でも、多くのECサイトのレコメンドは「この商品を買った人は、ほかにこんな商品も買っています」という単純な見せ方で、なぜその商品をおすすめするのかをお客様に説明できていません。店頭で行われている自然な接客と比べると、まだまだ届けきれていないものが多いと感じていました。

香取:店頭で培った肌感覚を持ったままECに移られたからこそ見えるギャップですね。茅野さんがInsightXのことを最初に知ったのは、2022年の12月頃だったと思います。当時のことを覚えていらっしゃいますか?

茅野氏:ええ、よく覚えています。初めてInsightXの提案──『シェルフ型AIレコメンド』という、当時はまだ世に出ていなかった発想を見た瞬間、感覚的に「良い」と思いました。それまでのレコメンドとは明らかに異なる思想で設計されていて、お客様がより商品を購入したくなるだろうと、直感で確信しました。

香取:その直感の背景には、何があったのでしょうか?

茅野氏:アパレルの商品は、感覚的に選ばれることが多いと思っています。お客様は「これが欲しい」と明確に思って手に取るというより、「なんとなく気になる」「これいいかも」という直感で商品に触れていく。InsightXのソリューションは、そんな直感で商品を手に取るお客様に、「こちらもいかがですか」と気づきのきっかけを与えてくれる。店頭で店員がやっていることに、とても近い思想だと感じました。

香取:ありがとうございます。手応えを感じていただきながら、本格導入までは少し時間がかかりましたよね。

茅野氏:当時は社内にも他の優先課題がいくつか重なっており、進め方をめぐる議論が続いていました。立ち上がったばかりだったInsightX側との検証設計も含めて、なかなかタイミングが噛み合わず、PoCの実施も検討しましたが、最終的にはペンディングとなってしまいました。

当時、既存レコメンドのリプレースも含めて検討する中で、私個人としてはInsightXのソリューションに強い手応えを感じていました。だからこそ、社内事情で進められないままになってしまったのは悔しかったですし、「いつかまた話したい」という気持ちは、ずっと持ち続けていました。

香取:そして2025年、改めて本格的に取り組みを開始することになりました。

茅野氏:はい。レコメンドの仕組みをリプレースするところから始めて、シェルフの導入、そして現在に至るまで、最初に共感したあの思想のまま、着実に進められています。

信頼の基準は「人」──敬意と愛嬌があるチーム

香取:ツール選定の段階で、特に重視されていたポイントは何でしたか?

茅野氏:一番は「人」です。パートナーとして信頼が置ける人か、課題を乗り越えてやりきれる人なのかが重要でした。そのため、担当する方のコミュニケーション能力や、こちらの話に対する理解力は、かなり慎重に見ていました。

香取:その観点で、InsightXの対応についてどう感じていらっしゃいますか?

茅野氏:「敬意と愛嬌がある」という表現が、一番しっくりきます。業務内の丁寧な対応はもちろん評価していますが、業務だけにとどまらず話を広げ、1対1の人として関係性を築いてくれると感じました。私たちの事業について本気で考えてくれていることが伝わってくるので、この人たちとなら安心してやれる、と思えました。

香取:そう感じていただいて嬉しいです。信頼につながる関係性を築こうという感覚は、InsightXとしても大事にしています。

茅野氏:たとえば、2025年末に15営業日連続でリリースを公開されていましたよね。年始にもいくつか発信されていて、社内のメンバーにも共有したのですが、ああいう情報を見ると「この会社はこういう会社なんだ」というのがよくわかります。どこまでやってくれそうか、どこまで相談できるのかが見えてくるので、こちらとしても話しやすくなります。

香取:リリースを見て何か印象に残ったことはありましたか?

茅野氏:香取さんや副担当として関わってくださっているInsightX CBDOの角さんのパーソナリティがわかるコンテンツが載っていて、面白かったです。人柄を深く知ることは安心感につながりますし、相手のことを知っていると、こちらからも話しかけやすくなります。年始にお食事もご一緒させていただきましたが、ああいう場があると、ぐっと距離が縮まりますね。

香取:私たちもとても楽しい時間を過ごさせていただきました。ぜひまたお声がけください。ちなみに、「ツールを選ぶときも結局は人」という考え方になったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

茅野氏:何か明確なきっかけがあったというより、ずっと積み重なってきた感覚です。いくらツールがよくても、担当者のレスポンスが遅かったり、ただ数字の報告を受けるだけだと、その後ほとんど使われないまま「ただ入れているだけ」の状態になってしまうケースを、いくつか見てきました。仮にある程度の効果が出ていたとしても、それで満足してしまうのは、自分が考える仕事の楽しさとは少し違うんです。

実はこれは、ツールに限った話でもなくて。社内で一緒に働くメンバーに対しても同じで、どうコミュニケーションを取るか、その人がやりがいを持って働けているか、その人に合った役割を任せられているか。そういうことをいつも考えています。一緒に働く相手が誰であっても、結局は「人との関係」を大事にしたい。それが自分の根っこにあるので、ツールを選ぶときも自然と同じ視点になるんだと思います。

「並べる」から「勧める」へ──数字の裏で起きていたこと

香取:では、実際の成果面についても伺えればと思います。リプレースとシェルフ導入を経て、数字としてはどのような変化がありましたか?

茅野氏:2024年度から2025年度にかけて、EC売上は約120%の成長がありました。セッション数を増やすため、戦略的に広告投資を増やしたタイミングです。こうした戦略を取る場合、新規のお客様が増えるため、通常はどうしてもCVRが下がるものです。ところがCVRが落ちず、回遊性も維持できたため、トータルで見たときのコストパフォーマンスは非常に良かったと思います。

香取:戦略的に広告投資を増やしている中で、CVRと回遊性が維持できたというのは、レコメンドのリプレースやシェルフ導入が寄与しているところもあるかもしれませんね。

茅野氏:もちろん他の要因もありますが、全体として効果はあったと感じています。定量的な面でいうと、自然検索経由で流入されたお客様のサイト内回遊が増えました。広告だけを見るとCVRは多少変動していますが、それ以外のチャネルで見ると伸びている。検索経由でいらっしゃったお客様がサイト内を回遊していただいているという手応えがあります。

香取:InsightXの導入に関して、印象に残っているエピソードはありますか?

茅野氏:レコメンドのリプレースやシェルフ導入で表示の構成を変えたとき、社内から「良い意味で何も反応がなかったこと」が、私にとっては象徴的でした。

過去にツールを入れたり、表示の順番を組み替えたりすると、必ずどこかから「これ何で変えたんですか?数字が下がっているんですけど」といった懸念の声が上がるものなんです。けれど今回は、誰からも何も言われなかった。それは、数字がしっかり出ていたからこそ、問題視する人がいなかったのだと思います。

香取:「サイレント」は、想像以上に意味のある反応かもしれませんね。”商品の羅列”を見るページから、「これも合いますよ」と提案するページに変わったということが、数字にも、社内の空気にも表れているのかもしれません。ちなみに、導入後の取り組みの中で、InsightXの対応について印象に残っていることはありますか?

茅野氏:そうですね、常に次の提案を持ってきてくださるところです。他社さんでは、月次報告のみで関係が完結することもありますが、それだと聞いてわかった気になって終わってしまうんです。InsightXさんはいつも「次にこういうことをやりませんか」と踏み出すきっかけを用意してくれます。

香取:正直なところ、月次報告で定量結果のみをお渡ししたほうが、コミュニケーションコストはかからないのではないかと思うこともありました。

茅野氏:むしろ中長期的な視点で、定性的な話もしてくれるほうがありがたいです。数値ばかり気にしていると、短期的な意思決定をしがちで、お客様にとって本当に良いことなのかが見えづらくなります。InsightXさんは長期的に見た価値を常に考えてくれていると感じますし、そのスタンスのままでいてほしいです。

香取:そう言っていただけると、私たちとしても背中を押される思いです。「並べる」から「勧める」へ、レコメンドの在り方そのものを変える取り組みは、まだ道半ばですから。中長期で本質的な顧客体験を作るという軸は、これからも大切にしていきたいです。

店舗と同じ顧客体験を目指してーー「面白い」会社と共に描く次の一歩

香取:今後、InsightXとの連携において、どのようなことに挑戦していきたいですか?

茅野氏:会社としても個人としても、ECサイトにおいて店舗と同じような顧客体験を生み出したいと考えています。それを実現できるのがパーソナライズだと思っていますし、InsightXさんだからこそ実現できると期待しています。今はトップページ、商品詳細、商品一覧の商品シェルフが中心ですが、今後はコーディネートやメール、記事といった他のコンテンツにも範囲を広げ、アプリにも展開していきたいですね。

香取:私たちもまさにそこに向けて取り組みを進めているところです。コーディネートや記事は、商品だけでは伝わらないブランドの世界観を運ぶコンテンツでもあるので、パーソナライズと相性が良い領域だと考えています。

茅野氏:個人的には、もっと先の理想として、店頭でのキャッチボールのような対話的な接客もECで実現できたらと夢を見ています。お客様のニーズを引き出して応えるような、店頭で行われる店員とお客様の会話のキャッチボールは、ECサイトではまだ実現できていない領域です。技術的な制約もあるでしょうし、すぐに実現できるとは思っていませんが、こうした未来を一緒に描けるパートナーがInsightXさんだと思っています。

香取:私たちも、技術的な課題に向き合いながら模索しているところです。まずは今、私たちがお届けできる領域を一つひとつ確実に積み重ねていって、その先で見える景色を、ぜひご一緒できればと思います。最後に、同じようにInsightXの導入を検討されている企業様に向けて、メッセージをいただけますか?

茅野氏:InsightXは、今までにない発想を与えてくれる会社です。仕事をしていて「これは面白いな」と思えるきっかけを提供してくれます。

ここでいう「面白い」とは”Interesting”の方です。初めての提案のとき、『シェルフ型AIレコメンド』というまだ世の中になかった新しい発想のサービスを、その背景の考え方や思想までこれでもかというほど言葉を尽くして説明してくださったんです。発想の新しさと、それを伝えきろうとする誠実さの両方が同居しているところに、面白さを感じました。

丁寧さや提案力といった強みはもちろんありますが、その手前に、人として、会社として「面白い」と思えたことが大きかったと思います。InsightXからリリースされるコンテンツなどを見ていても、その文化がメンバーの皆さんに浸透しているのが伝わってきます。提供しているソリューションや機能も優れていますが、何より「この会社の人と一緒に仕事がしたい」と思えるかどうかが重要です。InsightXの皆さんにはそれを強く感じましたし、取り組ませてもらっている中でも、そこが一番の魅力だと感じています。

香取:身に余るお言葉、ありがとうございます。”店舗の良さ”をECに実装する──まだ道半ばのこの挑戦を、これからもご一緒できることが私たちの財産です。本日は貴重なお話をありがとうございました。

■事例サイト

SHIPS公式オンラインショップ

https://www.shipsltd.co.jp

セレクトショップ「SHIPS」を展開する株式会社シップスの公式ECサイト。メンズ・ウィメンズ・キッズのアパレルから雑貨まで幅広く取り扱い、店舗とECの両軸で顧客体験を提供している。

文 |宿木屋

撮影|藤田亜弓

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